日本はアフリカの最西端に位置するセネガル共和国の地方給水分野に対し、1979年からの約20年間、総額約137億円にのぼる無償資金協力を実施してきました。これらの協力では119カ所の給水施設新設、33ヶ所の改修を行い、約44万人の村人が安全な水にアクセスできるようになり、地域社会に大きく貢献しています。
一方、これらの給水施設は建設後永久的に利用できるものではなく、時間が経つにつれ施設の故障や、部品交換などが必要になってきます。
この為、利用者である住民、修理主体である地方行政機関などが、持続的に維持管理を行っていく体制を作ることが、安全な水へのアクセスの保持の為に重要になります。
そこで日本は、これまでのハード的な支援に加え、能力向上や組織化などといったソフト面への強化を行う技術プロジェクトを行うこととしました。
技術プロジェクトは日本の援助形態の一つで、1)専門家の派遣、2)研修員の受入れ、3)機材の供与という3つの協力手段を組み合わせることにより、先方関係者の能力強化を図るものです。PEPTACはこのスキームの中でも「民間委託型プロジェクト方式技術協力(民活技プロ)」という、民間コンサルタントが初めて技術プロジェクトを実施することになった案件です。
PEPTACでは、日本が過去に建設した25の給水サイトにおける持続的な水利用体制の確立を目標としていますが、給水施設を切り口として、施設の運営維持管理だけではなく、教育や保健、人々の所得向上に対する取り組みなど多角的にアプローチし、コミュニティ全体の生活向上を目指しています。
プロジェクト目標 | プロジェクト対象サイトでの活動を通じ、持続的な水利用体制が確立される |
成果 | 1.行政、村落住民および民間業者の連携による給水施設維持管理システムが構築される 2.水管理委員会が適正に運営される 3.水利用ガイドラインに沿った水利用が行われる 4.実証サイトにおける生産活動が多様化する 5.対象サイト住民の衛生慣習が改善される |
セネガルでは地方村落における給水施設の運営維持管理は水利用者管理組合(ASUFOR)または民間維持管理業者が行うこととなっており、水の使用量に応じた“従量制”による水料金の支払いが定められています。
ASUFORの維持管理体制では、事務局と契約した施設操作員(オペレーター)が給水施設の稼働や軽微な修理を行い、事務局と契約を行った公共水栓の管理人によって水料金が徴収されます。
事務局によってそのお金が管理され施設の修理や機器更新に充てられる仕組みとなっていますが、これまで機器更新に関わる費用の積立や使用量に応じた水料金を支払う習慣になかった村落も多いことから、このような仕組みを紙芝居を使って住民総会にて分かりやすく説明し、ASUFOR設立を呼び掛けました。
ASUFOR設立の普及活動は、事前に研修を受けた維持管理センター(BPF)職員が専門家の補助のもと行っています。これにより、DEM職員の啓蒙・普及員としての能力が向上し、その後も職員独自によって対象外53サイトで啓蒙・普及活動が行われています。
またPEPTACでは、ASUFOR設立啓発活動の実施者であるこれらBPF職員やBPFの上位機関である維持管理局(DEM)に対し、住民説明、施設オペレーター指導、管理費試算方法などを含む12種類のマニュアルを作成しています。BPF・DEM職員向けのマニュアルはその他ドナー・NGOによっても多数作成されていることから、後にPEPTACにより関係機関に対し標準化をを提唱しています。
このようにPEPTACで行った活動の成果は、他地域、他プロジェクトにより普及展開が図られています。
PEPTACでは、ASUFORの積立金やその組織力を他分野へ適用することにより、ASUFORの活動資金の向上および地域内の所得向上を図っています。
パイロットとして、ASUFORの組織運営が良好で、積立金が十分に蓄えられている2サイトを選定し、野菜栽培、養鶏、牧畜などに係る技術指導を行いました。ASUFORはこれら活動毎に作成されたグループの財政支援や全体管理を行っています。
これまで農業グループや女性グループが継続していかない理由の一つに、組織力の不足が挙げられていましたが、ASUFORの組織力が他活動の発展に寄与することが証明され、継続案件であるPEPTAC2でもその取り組みが引き継がれています。