ラオスはタイ、中国、ミャンマー、ベトナムに囲まれた内陸の山陸国で、人口484.5万人(1997年時点)を抱える貧困国です。
本調査が実施された1999年~2000年におけるラオスの地方給水率は38%(WHO)で、これに対しラオス政府は第4次5ヶ年計画(1996~2000年)の中で、遠隔農村部に対するインフラ整備へのアクセス改善と地方給水率を60L/人/日(レベルIで40L/人/日)という目標を掲げました。
本調査はこの目標達成のため、ラオスでも最も開発の遅れた地域であるルアンナムタ県とボケオ県の2県を対象に水供給・衛生改善を目的とした計画策定を行うために実施されたものです。同対象地域は首都から600~800Km離れ、雨期には橋梁がないためにアクセス不可となる遠隔地域です。村落住民の多くは河川や伝統的手掘り浅井戸から汲んだ不衛生な水を生活用水として利用しており、下痢・赤痢やマラリアなどの水因性疾病が多数発生しているような状況でした。
本調査は、開発計画調査型技術協力であり、開発途上国の政策立案や公共事業計画の策定などを支援しながら、相手国のカウンターパートに対し、調査・分析手法や計画の策定手法などの技術移転を行うものです。
本調査ではカウンターパート機関である国立環境衛生・給水センター(通称NamSaat)と共に、対象県における給水・衛生改善のため、3フェーズに分け以下の目的に沿った活動が行われました。
本調査は地域住民との対話に基づいた施設計画と維持管理体制に係る合意形成ならびに住民の自主的参加を重視しており、PRA(Participatory Rapid Appraisal)やPCM(Project Cycle Management)等、参加型開発手法を積極的に導入し実施しました。
住民との対話により、インフォームド・チョイスを引き出す
本調査では、参加型手法を用い、村落の実態調査やニーズ調査も、現地の住民が主体となって行っています。
その事前準備として、調査・計画立案の担い手となる現地のカウンターパート(県・郡レベルNamSaat職員)、地域代表者に対し、PRA(Participatory Rapid Appraisal)やPCM(Project Cycle Management)等の参加型開発手法を含む、能力強化研修が行われました。
参加者は研修で得た知識を利用して、各対象村落での対話(コミュニティ・ダイアログ)を通し、建設される施設のタイプや技術レベル、地域住民の負担意思等に関しての情報を十分に説明しました。その結果、対象81村落において、自然流下方式による給水施設、手流し式水洗トイレなど、住民の意思により各村落の状況に見合った施設タイプが選定されました。
これら村落実態調査と並行して邦人専門家により行われた水源調査結果を整合し、村落住民・コミュニティとの合意の基、給水計画および衛生改善計画が策定されました。
【住民参加によるGFS取水施設建設】
GFS:自然流下方式(Gravity Fed System)
住民参加による配管敷設工事
策定した給水計画・衛生改善計画を実際に実施するために、フェーズIの対象81村落から選定された34村落において下に示すステージA~Eのプロセスを経ながら、16の給水施設と12の衛生施設の建設が行われました。
パイロット・スタディは、施設供与そのものではなく、住民自身が参加する施設建設の行程を通して、施設工法、維持管理法、調査手法、住民間のコンセンサス確立のための協議方法、施設に対するオーナー・シップの醸成など、地域代表者および村落住民の能力開発の向上にも重きを置いて行われました。
完成した公共水栓を利用する住民
パイロット・スタディで建設された給水・衛生施設の住民による運営・維持管理についてカウンターパート・地域代表者と共にモニタリングを行い、水利用に関する住民の生活習慣・衛生意識、施設建設時・建設後における社会環境の変化ならびに効果の評価を行い、その結果を踏まえて、対象地域における水・衛生セクターに係る総合的な開発計画が策定されました。